大学の発明を、世界標準に。

ペプチドリーム × モダリス × そーせい(ネクセラ)
― 日本発バイオスタートアップ3社に学ぶ、プラットフォーム創薬の知財設計
同心円型特許ポートフォリオ × CRISPRライセンス・レイヤー × GPCR技術買収
Aegis Nova IP Consulting | 2026年4月 | 知財ポートフォリオ比較分析レポート

Contents

  1. 全体サマリー ― スタートアップ×創薬の知財は「王道製薬」と別次元
  2. プラットフォーム創薬ベンチャーに特有の8つの知財論点
  3. ペプチドリーム ― PDPS同心円型ポートフォリオの完成形
  4. モダリス ― CRISPR知財レイヤーを組み合わせた独自ポジション
  5. そーせい(ネクセラ)― 英国Heptares買収で世界No.1 GPCR企業に
  6. 3社比較 ― プラットフォーム創薬スタートアップの成功パターン
  7. 追うべきシグナル ― 2026年以降の論点
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全体サマリー ― スタートアップ×創薬の知財は「王道製薬」と別次元

日本発のプラットフォーム創薬バイオスタートアップの知財戦略は、既存ケースで扱った「ディープテック(PFN・アストロ・TBM)」とも「大型製薬(第一三共・アステラス・塩野義)」とも異なる、独自の知財論空間に位置する。

スタートアップ×創薬が特殊である理由(5つの構造的違い)

大学発研究を基盤とする構造:多くが東大・京大などの国内トップ大学の研究成果を基盤とし、大学TLOからのライセンス契約が事業の出発点。自社特許と大学特許の二層構造を設計せねばならない。
物質特許ではなくプラットフォーム技術特許で勝負:個別の医薬品ではなく、「創薬を可能にする技術基盤」を特許化する。ペプチドリームのPDPS、モダリスのCRISPR-GNDM、そーせい(ネクセラ)のNxStaR/NxWave等。
メガファーマとのアライアンス依存:自社で臨床開発・販売する資金力がないため、メガファーマに技術ライセンスアウトしてロイヤリティを稼ぐビジネスモデルが基本。
赤字上場・マイルストーン収益モデル:創薬成果は10-15年先のため、マイルストーンフィー・契約一時金・ロイヤリティという独特の収益構造。
論文・学会発表と特許出願の厳しい時間管理:大学研究者の業績評価は論文に依存する一方、論文公開は新規性喪失の原因となる。この緊張関係の解消が経営課題となる。
日本発創薬スタートアップの3つのアーキタイプ
ペプチドリームは「同心円型特許ポートフォリオ」で18社のメガファーマと対等交渉するプラットフォーマー型。
モダリスは米Editas Medicineとのライセンス・レイヤーを組み合わせた切らないCRISPR型。
そーせい(ネクセラ)は英Heptares社を480億円で買収して世界No.1 GPCR企業となる買収型。
同じ「大学発創薬バイオ」でも、知財戦略の組み立て方は全く違う。

興味深いことに、本レポートで扱う3社はすべて既存の大型製薬会社ケース(第一三共・アステラス・塩野義・武田等)と密接に提携している。創薬スタートアップの知財戦略は、「大手製薬との契約設計」そのものでもある。

ペプチドリーム
「同心円型特許×18社連携」
2006年東大発、PDPS(Peptide Discovery Platform System)を3つのコア特許+周辺特許で同心円状に保護。18社のメガファーマと共同研究、6社に技術ライセンス
モダリス
「CRISPRレイヤー組合せ」
2016年東大発、「切らないCRISPR」CRISPR-GNDM®技術。東大ライセンス+米Editas Medicineライセンスのパッケージで希少遺伝子疾患を狙う。アステラスと380億円契約
そーせい(現ネクセラ)
「M&A立国×GPCR No.1」
2015年に英Heptares社を最大4億ドル(約480億円)で買収(日本創薬企業買収として当時最大)。NxStaR™/NxWave™でGPCR構造ベース創薬の世界的リーダーに。2024年4月ネクセラファーマへ商号変更

3社の基本データ

項目 ペプチドリーム モダリス そーせい/ネクセラ
証券コード 4587(東証プライム) 4883(東証グロース) 4565(東証プライム)
創業・設立 2006年7月 2016年1月(旧エディジーン) 1990年6月
大学との関係 東京大学発(菅裕明教授・後藤佑樹教授らの研究) 東京大学発(濡木理教授の研究) 旧ジェネンテック日本法人出身の田村真一氏が創業
コア技術 PDPS(Peptide Discovery Platform System):フレキシザイム、FITシステム、RAPIDディスプレイシステム CRISPR-GNDM®(Guide Nucleotide-Directed Modulation):切らないCRISPR NxStaR™/NxWave™:GPCR構造ベース創薬(SBDD)プラットフォーム
経営トップ 窪田規一会長、リード・パトリック社長 森田晴彦CEO(元キリンビール・ブーズアレン) Peter Bains社長CEO(Heptares出身、2015年以降)
上場 2013年6月(東証マザーズ)、2015年東証1部 2020年8月(東証マザーズ) 1999年12月(JASDAQ)、2014年マザーズ、東証1部
主要提携先 18社のメガファーマ(AMGEN、AZ、Bayer、BMS、Genentech、GSK、IPSEN、Janssen、Lilly、Merck、Novartis、Sanofi、旭化成、杏林、塩野義、第一三共、田辺三菱、帝人) アステラス、エーザイ(2社で5件の共同開発)。基本特許ライセンスは米Editas Medicine Pfizer(最大10種GPCR提携)、Allergan、AstraZeneca、Novartis、武田薬品、Teva等
パイプライン 常時50-60本を確保 協業5品目+自社2品目=計7品目 複数領域で幅広いパイプライン(中枢神経、がん、代謝、希少疾患)
ビジネスモデル アライアンス事業単一セグメント、VC依存せず黒字化 協業モデル+自社モデル、2019年黒字化 Novartis向けロイヤリティが既存収益、Heptares以降はマイルストン型
特徴的なM&A 100%子会社PDRファーマ(放射性医薬品) 米EdiGENE Inc.(ボストン子会社) Heptares買収(2015年2月、最大4億ドル)、Heptares Zurich AG買収(2016年)

出典:各社公式サイト、IP BASE(特許庁)、IPO目論見書、日本証券新聞、Answers News、東京大学「Entrepreneurs」、Toyo Keizai、日経新聞、Bio Nikkei、バイオステーション、JBpress、Strainer、Wikipedia、AstraZeneca公式発表、小野薬品公式発表、chemical blog(化学業界の話題)、PR TIMES等。モダリスは2020年8月東証マザーズ(現グロース)上場。そーせいは2024年4月1日にネクセラファーマ株式会社へ商号変更。売上・パイプライン・提携先等は各社公表情報に基づく。

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プラットフォーム創薬ベンチャーに特有の8つの知財論点

スタートアップ×創薬の知財戦略における核心的論点

創薬バイオスタートアップは、大学発研究 → 技術プラットフォーム化 → メガファーマとのアライアンス → 新薬創出 → 上市・収益化という長大なプロセスを経る。その全段階で知財戦略が決定的重要性を持つ:

論点①:大学TLOライセンスの設計

・大学発スタートアップは、基盤技術の発明者が大学研究者であるため、特許権は大学が保有する構造。
・スタートアップは独占的通常実施権(Exclusive License)をTLOから取得するのが通例。
ロイヤリティ条件、サブライセンス権、特許維持管理費の負担など、契約条項の設計で事業経済性が決まる。
ペプチドリームは東京大学TLOと「包括的連携」を構築し、TLOが特許管理の労力を負担する代わりにロイヤリティを受け取る仕組み。研究資金は企業と大学で完全分離(利益相反回避)。
論点②:特許ポートフォリオのパッケージ化

・単独の特許では参入障壁として不十分。「コア特許+周辺特許」の同心円状配置が王道。
・ペプチドリームIP BASE事例:「創業当時から、3つのコア特許を中心に、関連する複数の知財をパッケージ化した特許ポートフォリオを構築」(特許庁糟谷長官との意見交換、2020年11月)。
・「単独の知財権では得られにくい強固な参入障壁を形成」することで、メガファーマとの交渉で「引けを取らない」対等な立場を確保。
論点③:ライセンス・レイヤーの組み合わせ

・CRISPR等の分野では、基本特許が世界の複数機関(UC Berkeley、MIT Broad Institute、MPI等)に分散
・モダリスは「東大ライセンス+米Editas Medicine(Broad研の特定医療分野実施権保有)ライセンス」の二層構造を構築。森田CEO:「基本特許を持つ米エディタス・メディシンと交渉し、知財のパッケージを作ることができた。これが2つ目のブレークスルーです」。
・複数のライセンス元から重ね合わせて実施権を取得する「パッチワーク戦略」は、CRISPR・抗体・核酸医薬など新興モダリティで必須。
論点④:技術買収によるプラットフォーム獲得

・自社でのプラットフォーム開発に時間をかける代わりに、既に確立された海外バイオベンチャーを買収する戦略。
・そーせいグループのHeptares買収(2015年2月、最大4億ドル≒約480億円)は、日本創薬企業の買収として当時過去最大。これにより一気にGPCR創薬の世界的リーダーに躍進。
・買収時のIPDD(知財デューデリジェンス)、特許の有効性検証、クロスライセンス整理、既存提携先との契約継続性確認が成否を分ける。
論点⑤:メガファーマとの共同研究開発契約(アライアンス)

・スタートアップ単独では臨床試験・グローバル販売は不可能。メガファーマとの戦略的提携が必須。
・典型的な契約構造:
- 契約一時金(Upfront Fee):数百万〜数千万ドル
- マイルストンフィー(開発段階到達で支払い):最大数億ドル
- ロイヤリティ(上市後売上の数%)
- R&D費用負担の取り決め
モダリスとアステラスの契約は一時金+マイルストン合計380億円以上(5品目の協業モデルパイプライン合計)。
・そーせい傘下Heptares×AstraZeneca契約:一時金1,000万ドル+開発・商業化マイルストン5億ドル超+売上2桁ロイヤリティ。
論点⑥:パイプライン多品種化と分散リスクヘッジ

・1製品の成功確率が極めて低い(臨床第1相→承認まで10%以下)ため、多品種のパイプラインでリスク分散
・ペプチドリームは常時50-60本のパイプラインを確保することで、VC依存せず黒字経営を実現。
・モダリスは協業5品目+自社2品目の7品目体制。
論点⑦:論文発表・学会発表のタイミング管理

・大学研究者は論文業績で評価されるため、特許出願前に論文公表すると新規性喪失で特許取得不能となる。
・特許庁意見交換でもペプチドリームは「論文や学会発表が自身の特許化の妨げになることへの啓発が必要」と指摘。
・実務上は、論文投稿前に特許出願完了するフローと、新規性喪失の例外規定(日本:特許法30条、1年以内の救済)の活用が必要。
論点⑧:IPO時の知財ストーリーテリング

・創薬バイオは赤字上場が常態(パイプラインの将来価値で評価される)。
・IPO時の有価証券届出書・目論見書には、特許ポートフォリオの概念図を明示することが投資家評価を左右。
・ペプチドリーム上場目論見書(2013年5月)は「PDPS特許ポートフォリオ同心円概念図」を含む詳細な知財開示を行い、創薬ベンチャーIPOのテンプレートとなった。

プラットフォーム創薬スタートアップの収益モデル

※一般的なプラットフォーム創薬スタートアップの収益の流れ(例示的モデル)。各フェーズでキャッシュフローが発生する仕組み。

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ペプチドリーム ― PDPS同心円型ポートフォリオの完成形

東京大学発、特殊ペプチド創薬のプラットフォーマー

ペプチドリーム株式会社は、2006年7月に東京大学発のバイオベンチャー企業として設立された。創業の基礎となったのは、東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授らが開発した「フレキシザイム」技術である。

PDPS(Peptide Discovery Platform System)の3つのコア技術

PDPSは、ペプチドリームの創薬を可能にする独自プラットフォームで、3つのコア技術から構成される:

フレキシザイム(Flexizyme)
ほぼ全てのtRNA上で天然アミノ酸と特殊アミノ酸を高効率で結合させることができる人工RNA触媒。通常のアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)に代わる人工触媒で、あらゆるアミノ酸およびアミノ酸誘導体を任意のtRNAと結合可能。ペプチド合成に活用できるビルディングブロックの種類を大幅に増やすことを可能にした革命的技術。

FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)
フレキシザイムにより創製されたビルディングブロックを、無細胞翻訳系で特殊ペプチドを大量合成する技術。細胞を使わないため、自然界に存在しない特殊アミノ酸を含むペプチドを自由に生成可能。

RAPIDディスプレイシステム(RAndom Peptide Integrated Discovery)
特殊ペプチドを数兆種類のライブラリから高速スクリーニングできる技術。従来のライブラリに比べて格段に多様性が高く、ターゲットタンパク質に対するヒット化合物を極めて効率的に発見可能。

特許庁糟谷長官との意見交換(2020年11月2日)

創業当時から、3つのコア特許を中心に、関連する複数の知財をパッケージ化した特許ポートフォリオを構築し、独自の創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)を設計されたことなどを御紹介いただきました

「特に、堅固な特許ポートフォリオにより、参入障壁を形成するとともに、世界的なメガファーマに対して引けを取らない交渉を行い、好条件で共同研究開発契約を結ばれているなど、知財の効果的な活用方法は、創造的で示唆に富むものです」(特許庁HP)。

ペプチドリームは日本のスタートアップ知財戦略の模範事例として、特許庁のIP BASE事例集の第10番目に収録されている。

同心円型特許ポートフォリオ ― 特許の迷宮

ペプチドリームの特許ポートフォリオは、3つのコア技術特許を中心に、周辺の応用特許・改良特許・ライブラリ特許で囲む同心円状の構造を持つ。上場時の目論見書(2013年5月)で公開されたこの概念図は、創薬ベンチャーの知財戦略のテンプレートとなった。

ペプチドリーム特許ポートフォリオの層構造

内層(コア特許)
・フレキシザイム基本特許(東大TLOからの独占的通常実施権)
・FITシステム基本特許
・RAPIDディスプレイシステム基本特許

中層(応用特許)
・PDPS自動化プラットフォーム
・各種ペプチドライブラリ
・スクリーニング手法の改良

外層(周辺特許)
・特定ターゲット向けペプチド組成
・投与経路・製剤特許
・RI-PDC(ペプチド-放射性核種複合体)等の新規モダリティ

目論見書より:「この創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)の特許・発明群を各種ライブラリーの発明が取り囲む形にすることにより、特許ポートフォリオは同心円状に特許・発明を強化することが可能になりました
大学TLOとの包括的連携 ― 利益相反回避の設計

自社内の知財管理を限定的とし、東京大学のTLOと包括的に連携する体制。
・同社の事業の核となる技術の多くはTLOからライセンスを受ける形で継続保有し、TLOが特許管理の労力を負担。
・ペプチドリームがハブとなって多くのグローバルな製薬メーカーから開発資金を得て、それをTLOにロイヤリティとして払うことで、TLOも多くの収益を得る。
研究資金のやり取りは完全に企業と大学側で分離する方針(アカデミアの研究の自由を守り、利益相反を回避するため)。
ニューヨーク州立大学ともフレキシザイム開発に係る基本特許に関して第三者へのサブライセンス付き契約を締結。

18社のメガファーマとのアライアンス ― 対等な交渉力

ペプチドリームは、設立から約7年間で世界的製薬企業18社との間で創薬共同研究開発契約を締結。さらに6社に対してはPDPSの非独占的技術ライセンスを供与している(2018年6月時点、日経新聞)。

提携形態 対象企業(計18社)
共同研究開発契約(18社) 米AMGEN、英AstraZeneca、独Bayer、米Bristol-Myers-Squibb、米Genentech、英GlaxoSmithKline、仏IPSEN、米Janssen、米Lilly、米Merck & Co.、スイスNOVARTIS、仏Sanofi、旭化成ファーマ、杏林製薬、塩野義製薬、第一三共、田辺三菱製薬、帝人ファーマ
PDPS技術ライセンス(6社) 米Bristol-Myers-Squibb、スイスNOVARTIS、米Lilly、米Genentech、塩野義製薬、米Merck & Co.
2021年3月追加 小野薬品(PDPS自動化プラットフォーム導入、契約一時金+マイルストン+ロイヤリティ)

ペプチドリームのビジネスモデル哲学

「研究パーツのサプライヤーで終わらない」戦略:
それでは研究におけるパーツのサプライヤーとして終始してしまう。これでは、同社の夢である『新しい分野における創薬開発』は実現できないと判断し、独自のビジネスモデルを模索」(IP BASE)。

結果として生み出された戦略がPDPSであり、この特許ポートフォリオによって現在では世界の名だたる製薬会社とのアライアンスを築き上げ、同社が創薬分野における「プラットフォーマー」となる形を構築している。

また、投資期間が長期におよぶ創薬事業において、創薬パイプラインを常時50~60本確保することで安定した経営を実現。これにより、ベンチャーキャピタルや研究助成金へ過度に依存することのないビジネスを展開。安定した事業基盤と売上の確保によって、大企業とのアライアンス締結時にも対等な交渉ができている。

PDRファーマ ― 放射性医薬品事業への拡大

ペプチドリームは2020年に100%子会社PDRファーマ株式会社(旧・富士フイルムRIファーマ)を買収し、放射性医薬品事業に参入。ペプチドリームとPDRファーマの技術、ノウハウ及び提携ネットワーク等を融合し、RI-PDC(ペプチド-放射性核種複合体)を含む新たな放射性医薬品の創出、海外からの有望放射性医薬品の導入等を進めている。

これは、「特殊ペプチド×放射性核種」という新しいモダリティを切り拓く戦略的買収であり、PDPSプラットフォームの応用領域を拡張する布石。

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モダリス ― CRISPR知財レイヤーを組み合わせた独自ポジション

「切らないCRISPR」という独創的アプローチ

モダリス(旧エディジーン、2016年1月設立)は、東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻の濡木理教授の研究成果を基に設立された。CEOの森田晴彦氏(東大工学部卒、元キリンビール、元ブーズ・アンド・ハミルトン)は、バイオテック領域のシリアルアントレプレナーとして知られる。

CRISPR-GNDM®(Guide Nucleotide-Directed Modulation)技術

通常のCRISPR-Cas9ゲノム編集:
DNA二重鎖を切断して遺伝子を破壊または別配列を挿入
不可逆的な変化が細胞分裂で受け継がれる
・がん化リスク、オフターゲット切断の問題

モダリスのCRISPR-GNDM®(「切らないCRISPR」):
切断活性を喪失させたCas9(dCas9)に、転写調節因子(エピゲノムモジュレーター)を連結
・DNAを切断せず、遺伝子の「スイッチ」をON/OFFするだけ
可逆的で安全性が高いアプローチ
・ウイルスベクター(AAV)に搭載可能なサイズにコンパクト化

結果として、単回投与で長期持続効果、病態を根本的に改善することが動物試験で示されている。先天性筋ジストロフィー、中枢神経系疾患、筋疾患等の希少遺伝性疾患(7,000種以上)が主な標的。

モダリス森田CEOの知財ブレークスルー戦略(AnswersNews 2020年12月)

今の医薬品は、昔のように化合物が1つあれば商売ができるわけではなく、いろんな知財をパッケージにしなければビジネスができません

「モダリスは東京大発のベンチャーで、CRISPR-Cas9に関する知財の一部も東大にありますが、それだけだと商売にならないんです

「そこで、基本特許を持つ米エディタス・メディシンと交渉し、知財のパッケージを作ることができた。これが2つ目のブレークスルーです」

この発言は、スタートアップ創薬における「ライセンス・レイヤー組合せ」戦略の核心を端的に示している。基盤技術の特許が世界に分散している新興モダリティでは、複数のライセンス源から権利を束ね合わせることが必須。

CRISPR知財の複雑な世界地図

CRISPR-Cas9の基本特許は世界の複数機関に分散しており、モダリスはこの複雑な世界地図の中で独自のポジションを確保した。

CRISPR知財の分散構造

米ブロード研究所(MIT/Harvard)
・チャン・フェン氏(Feng Zhang)のCRISPR-Cas9基本特許(真核細胞への適用)
・世界で初めてヒト細胞でゲノム編集に成功した成果
エディタス・メディシン(Editas Medicine)がこれを特定医療分野でライセンス保有

UC Berkeley
・ジェニファー・ダウドナ氏(Jennifer Doudna)らのCRISPR-Cas9基本特許
CRISPR Therapeutics、Intellia Therapeuticsがライセンス保有

独メルク
・真核細胞へのCRISPRゲノム組込み技術特許
・2019年にブロード研との非独占的ライセンス契約を締結(広く知財を使用可能に)

東京大学
・濡木理教授らの改変Cas9関連特許(日本特許6628385号など)
・PAM配列認識を広範化する変異型Cas9
・切断活性を喪失させた小型Cas9に転写調節因子を融合したCRISPR-GNDM技術
モダリスのライセンス・レイヤー構築

2017年:東京大学との独占ライセンス契約(CRISPR技術)
・米エディタス・メディシンからブロード研基本特許の実施権を取得
・自社でCRISPR-GNDM®の改良特許を継続的に出願
・これら3層のライセンス・パッケージにより、商業化可能な知財ポジションを確立

東京大学の濡木理教授はモダリスの社外取締役も務め、東京大学協創プラットフォーム開発(UTEC)も出資。産学連携の典型的モデル。

アステラス・エーザイとの共同開発契約

モダリスのビジネスモデルは、「協業モデル」と「自社モデル」の2系統パイプライン。協業モデルでは、パートナー企業(アステラス、エーザイ)が選定したターゲットに対し、パートナーの資金でCRISPR-GNDM技術を用いた治療薬開発を行う。

モデル パイプライン 疾患領域 パートナー ステージ
協業モデル MDL-201 筋疾患 アステラス製薬 前臨床試験
MDL-202 筋疾患 アステラス製薬 前臨床試験
MDL-204 中枢神経系 アステラス製薬 研究段階
MDL-205 中枢神経系 エーザイ 探索段階
MDL-206 中枢神経系 アステラス製薬 探索段階
自社モデル MDL-101 先天性筋ジストロフィータイプ1A 単独 研究段階(サル試験)
MDL-102 中枢神経系 単独 探索段階

アステラス製薬との巨額契約

2019年以降のアステラス製薬との契約一時金およびマイルストンの合計は380億円以上(5品目の協業モデルパイプライン合計、IPO目論見書より)。

上場前に東大IPCなど複数社から41億円の資金を調達。設立4期目にして黒字化達成(2019年)。2020年8月3日に東証マザーズ(現グロース)市場に上場。

森田CEOの哲学:「(事業に)リスクはつきものですが、努力と我慢ができれば、なんとかなります。人のためになる、正しいことをやっていますし、問題の解決法を見つけてくれる仲間もいます。楽観しています」(東京大学インタビュー)。

グローバル体制 ― ボストン子会社が研究のメッカ

モダリスは米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に100%子会社Modalis Therapeutics Inc.(旧EdiGENE Inc.)を設立し、研究開発の中核拠点としている。「ゲノム編集のメッカ」ボストンに、アメリカ・中国・インドなど多国籍の優秀な頭脳を集結。

チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)には、東大医学部卒・同大学院修了後に日米で研究生活を送った山形哲也氏を森田CEOが「天才」と評して獲得。研究開発から遺伝子治療薬の承認まで10年強(通常の化合物医薬より短期間)で到達できるのが遺伝子治療薬の特徴。

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そーせい(ネクセラ)― 英国Heptares買収で世界No.1 GPCR企業に

そーせいグループ ― 日本のバイオベンチャー草分け的存在

そーせいグループは1990年6月に田村真一氏(元ジェネンテック日本法人社長)によって設立された、日本のバイオベンチャー草分け的存在。社名「そーせい」は、明治維新を成し遂げた長州藩第13代藩主毛利敬親の「そうせい(そうせよ)」という家臣への返答(自由に活動させる姿勢)に由来する。

そーせいグループの歴史的節目

1990年:バイオ医薬品の研究開発と技術移転事業を目的として設立
1999年:Drug Reprofiling Platform(DRP)プロジェクト開始、ドラッグリポジショニング(既存薬の新用途開発)の先駆者
2001年:フランスHRA Pharmaから緊急避妊薬NorLevo日本独占販売権取得
2014年:東証マザーズ上場後、Novartisへ導出したCOPD治療薬(Ultibro/Seebri)の世界的売上で急成長。一時、東証一部トップのトヨタ・みずほを超える売買出来高を記録
2015年2月:英Heptares Therapeutics Ltd.を最大4億ドル(約480億円)で買収 ― 日本創薬企業の買収金額として当時過去最大
2024年4月1日:ネクセラファーマ株式会社へ商号変更(社名のグローバル化)

Heptares買収 ― 日本創薬史上最大の戦略的M&A

2015年2月、そーせいグループは英国ケンブリッジのバイオベンチャーHeptares Therapeutics Ltd.を総額最大4億ドル(約480億円)で買収。これは日本企業による海外バイオベンチャー買収として当時最大の金額で、日本創薬業界に衝撃を与えた。

買収の背景:
・そーせいの主要収益源はNovartis向けCOPD治療薬ロイヤリティ(基本特許2026年満了予定)
・2026年のパテントクリフ後の新たな収益の柱が必要
「パイプラインに頼るのではなく、創薬技術を買う」という戦略判断

田村真一社長(当時):「Heptares社は大手製薬企業から買収を提案されていた」(日経バイオテク)。グローバルメガファーマとの競争入札を経た、戦略的な買収案件だった。

NxStaR™ / NxWave™ ― GPCR創薬の世界的リーダー

Heptaresの基盤技術「StaR® (Stabilised Receptor) 技術」(現在はNxStaR™にブランドリニューアル)は、創薬ターゲットとして重要なGタンパク質共役受容体(GPCR)に対する革新的アプローチである。

GPCRと創薬の重要性

・GPCRは細胞外の刺激(ホルモン、神経伝達物質、光、匂い等)を細胞内に伝えるタンパク質で、375個の受容体スーパーファミリーを構成
・現在の医薬品の約34%がGPCRを標的にしており、創薬ターゲットとしての重要性が極めて高い
・しかし、GPCRは細胞膜内で構造が不安定なため、従来の構造解析が困難
・このため多くのGPCRは「創薬困難(undruggable)」とされていた
NxStaR™技術の革新

・GPCRの構造を詳細に解明することで、従来創薬困難だったGPCRを標的とした医薬品の創出を可能にする
X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡で前例のない精度でGPCR構造を決定
・これによりNxDesign™構造ベース創薬(SBDD: Structure-Based Drug Design)で、最適化された治療候補薬を精密に設計
SaBRE(Saccharomyces cerevisiae-Based Receptor Evolution):真核生物を宿主とする系で、GPCRスーパーファミリーの中で発現が最も困難なものでも変異体を創出可能

対象疾患領域:
神経系疾患:アルツハイマー病、統合失調症、ADHD、片頭痛、依存症、レビー小体型認知症
消化器系・免疫疾患
代謝疾患
希少疾患

グローバルメガファーマとの提携網

Heptares(現ネクセラ)は、GPCR創薬の世界的リーダーとして、複数のメガファーマと戦略的提携を結んでいる:

提携先 契約内容 対価
Pfizer(米) 最大10種のGPCRターゲットに関する新規医薬品の戦略的提携契約 大型契約(契約一時金+マイルストン+ロイヤリティ)
AstraZeneca(英) アデノシンA2A受容体拮抗剤HTL-1071(がん免疫治療薬)のライセンス 契約一時金1,000万ドル+短期マイルストン+開発・商業化マイルストン5億ドル超+正味売上高の最大2桁段階的ロイヤリティ(2015年8月)
Allergan(米) アルツハイマー病等の中枢神経系疾患新規治療薬の開発・販売提携(2021年1月終了) 大型契約
武田薬品工業 中枢神経疾患のGPCRを対象とした共同研究(2011年4月開始) 2年間共同研究契約
Novartis(スイス) COPD治療薬Ultibro/Seebri(既存提携) ロイヤリティ収入(2026年基本特許満了)
Teva Pharmaceutical(イスラエル) 片頭痛治療を目指した研究開発契約 契約条件非開示
その他 MedImmune、Cubist、MorphoSys等との提携 各種契約

ケンブリッジの最先端研究拠点「The Steinmetz Building」

2018年、Heptaresは英国ケンブリッジ市Granta Parkの最先端研究開発施設「The Steinmetz Building」(35,000平方フィート)に移転完了。GPCRを標的とした新規医薬品研究者130名以上が世界中から結集。

MRC Laboratory of Molecular Biologyなど世界最高水準の研究施設と隣接し、研究環境は世界屈指。

施設名はMichael Steinmetz氏(米Clarus Ventures創始者、Heptaresの重要投資家、2016年逝去)に因んで命名。

Peter Bains社長CEO:「2015年のHeptares社買収の際、我々はStaR®技術並びに構造ベース創薬技術を当社の成長を生み出すコアエンジンとして確立することをコミット

2024年ネクセラファーマへ商号変更 ― グローバル次世代企業への進化

そーせいグループは2024年4月1日、ネクセラファーマ株式会社(Nxera Pharma)へ商号変更。これは「そーせい」という日本語名から、グローバルブランドへの転換を意味する。

同時に、基盤技術も「NxWave™プラットフォーム」として刷新:

NxWave™プラットフォームの5ステップ

ターゲット同定と検証:神経、GI・免疫、代謝、希少疾患領域のGPCR標的
NxStaR™構造解析:X線結晶解析+クライオ電子顕微鏡
NxDesign™構造ベース創薬:薬理学・化学・計算化学・機械学習の統合
開発候補薬の最適化:薬物動態・毒性評価
臨床開発とパートナーシップ:メガファーマとの共同開発
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3社比較 ― プラットフォーム創薬スタートアップの成功パターン

3社の知財プロファイル比較

※各社の知財戦略要素別強度(5段階推計)。公表情報に基づく。

プラットフォーム技術の成熟度と商業化度

※横軸:プラットフォーム技術の成熟度/縦軸:商業化・メガファーマ提携の規模

3社の戦略アーキタイプまとめ

ペプチドリーム:「同心円型特許ポートフォリオ×18社連携」型

成功の本質:創業時から3つのコア特許を中心とした同心円状の特許ポートフォリオを設計し、世界的メガファーマと対等な交渉力を獲得。VC依存せず早期黒字化、18社連携、6社技術ライセンス、50-60本の安定パイプライン。

知財戦略の特徴
・東京大学TLOとの包括的連携(企業-大学で研究資金完全分離、利益相反回避)
・PDPS=3つのコア特許+ライブラリ特許+応用特許の同心円構造
「技術ライセンスアウト型」の収益モデル(メガファーマが自社でPDPSを使用)

示唆:創業期から「パーツサプライヤーで終わらない」戦略意図を持ち、特許をパッケージ化してプラットフォーマーとしてのポジションを築いた。特許庁IP BASE事例第10番として、日本のスタートアップ知財戦略の模範。
モダリス:「CRISPR知財レイヤー組合せ」型

成功の本質:CRISPR基本特許が世界に分散する中、東京大学(濡木研)+米エディタス・メディシン(ブロード研)のライセンスレイヤーを組み合わせ、独自のCRISPR-GNDM®技術で希少遺伝性疾患市場に参入。アステラス製薬と380億円超の協業契約、設立4期目で黒字化、2020年東証マザーズ上場。

知財戦略の特徴
「切らないCRISPR」という安全性訴求で差別化(オフターゲット切断問題を回避)
・東大ライセンス×米Editasライセンス×自社改良特許の3層パッケージ
・ボストン子会社で多国籍研究チームを構築
・協業モデル(パートナー資金)×自社モデルの2系統パイプライン

示唆:新興モダリティ(CRISPR、mRNA、核酸医薬等)では、基本特許が国際的に分散するため、ライセンス・レイヤーの戦略的組合せが必須。森田CEOの「基本特許保有者との交渉がブレークスルー」発言は、新興創薬技術における知財戦略の核心。
そーせい/ネクセラ:「M&A立国×GPCR No.1獲得」型

成功の本質2015年の英Heptares社買収(最大4億ドル/約480億円)という日本創薬史上最大級のM&Aで、一気にGPCR創薬の世界的リーダーの地位を獲得。Pfizer(最大10種GPCR)、AstraZeneca(5億ドル超マイルストン)など複数のメガファーマとの戦略提携で、自社創製には10年以上かかる技術プラットフォームを「買う」戦略。

知財戦略の特徴
自社特許+買収による外部プラットフォーム取得のハイブリッド
・HeptaresのStaR®/NxStaR™技術によるGPCR構造解析の世界的リーダー地位
・2018年ケンブリッジ最先端研究施設「The Steinmetz Building」への移転
2024年4月のネクセラファーマへの商号変更(グローバルブランド化)

示唆「プラットフォーム技術は自社開発よりも買収の方が早い場合がある」という戦略判断。ただし買収成功にはIPDD(知財デューデリジェンス)、統合後の既存提携維持、文化統合という高度な実行力が必須。武田薬品のシャイアー買収(6.8兆円)との共通点と相違点の研究価値が高い。

3社比較マトリクス

評価軸 ペプチドリーム モダリス そーせい/ネクセラ
創業年と成熟度 2006年(20年) 2016年(10年) 1990年(35年)
プラットフォーム技術の独自性 ★★★★★ PDPSの3コア ★★★★☆ 切らないCRISPR ★★★★★ GPCR構造解析世界トップ
特許ポートフォリオの設計 ★★★★★ 同心円型の模範 ★★★★☆ 3層ライセンス ★★★★☆ 買収+自社
大学TLOとの連携 ★★★★★ 東大包括連携 ★★★★☆ 東大独占ライセンス ★★☆☆☆ 買収由来、大学発でない
メガファーマ連携数 ★★★★★ 18社共同研究、6社技術ライセンス ★★★☆☆ アステラス、エーザイ ★★★★☆ Pfizer、AZ、Novartis、Teva等
収益モデルの安定性 ★★★★★ 50-60本パイプライン、VC非依存 ★★★☆☆ 4期目で黒字化 ★★★★☆ Novartis既存ロイヤリティ+Heptares新規
M&A・買収戦略 ★★★☆☆ PDRファーマ買収 ★★☆☆☆ ボストン子会社設立 ★★★★★ Heptares 480億円買収
グローバル展開 ★★★★☆ 海外メガファーマ多数 ★★★★☆ ボストン子会社 ★★★★★ 英国本拠、世界展開
次世代モダリティへの拡張 ★★★★☆ RI-PDC等放射性医薬品 ★★★★☆ エピゲノム編集 ★★★★☆ NxWave™プラットフォーム
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追うべきシグナル ― 2026年以降の論点

3社のタイムライン

1990
そーせい設立
田村真一氏(元ジェネンテック日本法人社長)が創業、バイオ医薬品研究開発と技術移転事業
1999
そーせい、DRPプロジェクト開始
ドラッグリポジショニング(既存薬の新用途開発)の先駆
2001
そーせい、緊急避妊薬NorLevo日本独占販売権取得
フランスHRA Pharmaとの契約、初期収益源
2006/7
ペプチドリーム設立
東大発バイオベンチャー、菅裕明教授のフレキシザイム技術を基盤
2007
英Heptares Therapeutics設立
英国MRC Laboratory of Molecular Biology等の研究成果を事業化
2011/4
武田薬品、Heptaresと中枢神経GPCR共同研究
2年間共同研究契約、Heptares技術への注目拡大
2013/6
ペプチドリーム、東証マザーズ上場
PDPS特許ポートフォリオ同心円概念図を目論見書に開示
2014
そーせい、マザーズでCOPD治療薬急成長
Novartisへ導出したUltibro/Seebri売上拡大、一時東証一部トップレベルの売買出来高
2015/2
そーせい、英Heptares社を最大4億ドル(約480億円)で買収
日本創薬企業買収として当時過去最大、GPCR世界リーダーの地位獲得
2015
ペプチドリーム、東証1部へ市場変更
日本のバイオベンチャー代表格に
2015/8
Heptares×AstraZeneca提携
がん免疫治療候補HTL-1071、契約一時金1,000万ドル+マイルストン5億ドル超
2016/1
モダリス(旧エディジーン)設立
東大濡木理教授の研究を基に森田晴彦氏が起業
2016/4
モダリス、ボストン子会社設立
米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市にEdiGENE Inc.(現Modalis Therapeutics Inc.)
2017
モダリス、東大と独占ライセンス契約
CRISPR技術の東大特許を独占的に実施、Editas Medicineのライセンスと組合せ
2018
Heptares、Pfizerと最大10種GPCR提携
Heptares史上最大規模の戦略的提携の一つ
2018/6
ペプチドリーム、メルク社とPDPS非独占ライセンス
6社目のPDPS技術ライセンス、「業界になくてはならないプラットフォーム」
2018
Heptares、ケンブリッジSteinmetz Building移転
研究者130名以上、MRC Lab隣接の世界最高水準拠点
2019
モダリス、アステラスと協業契約
MDL-201/202/204/206の4品目、一時金+マイルストン合計380億円以上
2019
モダリス、設立4期目で黒字化達成
上場前までに東大IPC等から41億円調達
2020/8
モダリス、東証マザーズ上場
プラットフォーム:コアパーツ共通、ガイドRNAだけを変えれば新創薬可能
2020/11
ペプチドリーム、特許庁糟谷長官と意見交換
IP BASE事例第10番として日本スタートアップ知財の模範に
2020
ペプチドリーム、PDRファーマを子会社化
放射性医薬品事業に参入、RI-PDC等の新規モダリティ開拓
2021/3
ペプチドリーム、小野薬品とPDPSライセンス契約
小野薬品がPDPS自動化プラットフォームを導入
2024/4
そーせい、ネクセラファーマへ商号変更
NxStaR™/NxWave™プラットフォームにブランドリニューアル、グローバル企業化

2026年以降の論点

会社 主要論点 戦略オプション
ペプチドリーム PDPS基本特許の満了対応(創業2006年から逆算、2020年代後半)18社アライアンスからの具体的医薬品上市・ロイヤリティ本格化PDRファーマ買収シナジーの実現次世代モダリティ(RI-PDC、ペプチド医薬×ADC等)への展開 PDPS改良特許の継続出願で特許期間の延命/自社パイプラインの臨床進捗とブロックバスター化/放射性医薬品領域の拡大(グローバル市場年成長率20%超)/グローバルM&Aによるプラットフォーム拡張
モダリス アステラス協業品目(MDL-201/202/204/206)の臨床進捗自社パイプラインMDL-101のファーストインヒューマン試験CRISPR-GNDM®の他社ライセンスアウト可能性赤字継続と追加資金調達 協業モデル拡大(第3・第4のメガファーマパートナー獲得)/エピゲノム編集の他疾患領域展開/バイオシミラー参入障壁としての製法特許強化/海外ベンチャーとのM&Aでプラットフォーム強化
そーせい/ネクセラ 2026年のNovartis COPD治療薬特許満了後の収益補填ネクセラファーマ商号変更によるグローバルブランド確立Pfizer 10種GPCR提携からの開発品上市中枢神経系疾患(アルツハイマー、レビー小体型認知症)での臨床成果 NxStaR™/NxWave™プラットフォームの業界標準化/Heptares技術のさらなる外部ライセンス/中枢神経系薬のエーザイ(レケンビ)との補完関係活用/追加M&A(GPCR以外の新モダリティ拡張)
大学の発明は、戦略設計次第で世界標準になる
ペプチドリームは「3つのコア特許」を同心円で囲み、18社のメガファーマと対等交渉する地位を築いた。
モダリスは「東大×米Editas」のライセンス組合せでCRISPR時代に独自ポジションを取った。
そーせい(ネクセラ)は480億円のHeptares買収でGPCR世界リーダーになった。
それぞれが「知財×事業戦略×国際交渉」の複合芸術。日本のスタートアップ創薬の知財設計は、今まさに新たなステージに入っている。